OGインタビュー エルドリッヂ愛未さん(仁淀川町地域おこし協力隊OG)

エルドリッヂ 愛未さん
仁淀川町地域おこし協力隊OG(2021年7月~2024年3月)

〈現在の仕事・暮らし〉

執筆業、翻訳業、各団体との契約(企画や広報担当)、炭の注文販売など

〈自分のルーツを知るために仁淀川町へ〉

 関西で生まれ育つ中で、自分は世間のためになっているのか?自分が必要とされる所に行きたいという思いを抱えていました。そんな中、石川真理子さん著「女子の武士道」の翻訳をしたことがきっかけで自分のルーツや先祖について考えるようになり、祖父母が住んでいた仁淀川町(旧池川村)へ来ることを決めました。

〈地元の人が大切にしているものを知り、それを伝えたい〉

 地域のために自分は何ができるのだろう。地域活性化へのヒントを得るためにもまずは地域のことを知る必要があると考え、町民にインタビューを行い、それを発信することにしました。

 話を聞いていると地域の人が何を誇りに思い大切にしているのかが分かり、その後の活動のヒントになりました。インタビューで聞いた話は「口伝(くでん)NIYODOGAWA ORAL HISTRY」として記録し、歴史・文化の継承に今後も生かしていきたいです。

〈協力隊時代に生まれた別枝地区との関わり〉

 ふるさと納税の仕事の一環で返礼品事業者回りをしている時に、秋葉まつりで有名な別枝地区と出会い、地域で長年作られている「いりもち」に興味を持ちました。

 そして、いりもちなどの食品の加工などを行っている「秋葉生活改善グループ」と協力して新しい商品の開発やパッケージデザインづくり、イベント販売のお手伝いなどを行いました。

 また、同地区の活性化グループ「秋葉の里 未来会議」にも参加して椎茸の菌打ちや柚子取りなど作業の手伝いや、イベント企画などさまざまな協力をしてきました。

 現在は完全なボランティアですが、秋葉の里未来会議ではメンバーの一員として一緒に活動を続け、秋葉生活改善グループでは顧問として関わりのきっかけとなったいりもちを次世代につなげていく活動を行っています。これらの活動を通して「どうすればこの地域の文化を残していけるのか?」地域の皆さんと模索しています。

〈炭を使った産業づくりを目指して〉

 地域のことを知り人と深く関わる中で、安定した事業を町のためにつくり、地域経済を活性化させたいと思うようになりました。そこで目をつけたのが「粉炭づくり」でした。

 一般的な昔ながらの窯を使った燃料用の炭づくりではなく、プール式の平炉で炭化させて作るのが粉炭で、木や竹はもちろん植物の葉、茎、実や食品残渣など、自然の材料ならどんな物でも炭化できる点が自然豊かな仁淀川町に合っているのではないかと考え、実際に製造している会社まで見学にも行きました。

 粉炭には色々な用途があり、今事務所として使用している建物のぬり壁と床下にも粉炭が入っているのですが、家内の湿度を調整する効果があります。他にも土壌改良材として使用したり、食品として加工することもでき、いりもちに粉炭を使用することも地域の方と考えています。今は周辺にあるどんな物が利用できるのか、実際に自分でやってみながら特別注文があれば販売をしたり、ひとつの産業として成り立つ可能性を探っている段階です。

〈歴史文化継承、炭、防災を柱に地方創生へ取り組む〉

 退任後はお世話になった別枝地区に事務所を構えました。集落活動のお手伝いをしながら、協力隊時代から行ってきた口伝企画や英語ニュースオピニオンサイト「Japan Forward」への執筆活動を通し、「歴史文化の継承」と「炭事業の研究や可能性の模索」、「防災」の3つを柱に先祖の生まれた土地である仁淀川町に貢献していきたいと考えています。

 移住前に公益財団法人「Civic Force」という被災地支援や災害に強い地域づくりをサポートする団体で働いた経験があり、今も同団体と一緒に活動をしています。災害などで土地や自分の根本が揺らいだ時、自分達のアイデンティティーを取り戻すためにも、普段から地域の歴史や文化を知り、伝え継いでおくことが災害に強い地域づくり、すなわち防災にもつながる大切なことになってくるのではないでしょうか。

 また、「人のお手伝いがしたい」という思い、誰かのためのお手伝いが家族のため、地域のため、日本のため、さらには世界のためと幅が広がって大きくなればかっこいいと思います。まずはこの場所を拠点に地道に活動を続け地方創生に取り組んでいきたいです。

〈地域おこし協力隊を検討中の方、活動中の方へのメッセージ〉

 本当の地域おこしとは何かを考えてほしいです。まずは町の方針ややりたいこと、弱み、財政を理解し、地域に出て特に高齢者の話を聞き、みなさんが何を誇りに思っているのか知ってほしい。また、同じ場所に留まっていると情報が限られてくるので定期的に高知市や県外に出ることもいいと思います。

〈取材を終えて〉

 地域の方がエルドリッヂさんのことを「愛未ちゃんはファイターやね」と称していたことが印象的でした。地方創生という大きな課題への熱意と、幅広くて深い好奇心、探求心にも驚かされる一方で、地元の人との関係を大切にし、地域のことを知った上で自分にできることを考え行動していることを知り、独りよがりではない地に足が着いた活動をしていることが素晴らしいと思いました。

※この記事は2025年3月時点の情報を掲載しています。

取材担当 大原 梓