仙頭 由紀さん
室戸市地域おこし協力隊OG(2019〜2020)
〈現在の仕事〉
・子育てをしながら、海辺の暮らし体験を提供する「しいな遊海くらぶ」のイベントやWSのお手伝いなど
・WEBデザインとマーケティングの勉強中
〈とにかく海のそば、室戸で暮らしたい〉
室戸に来る前に、ワーキングホリデーでオーストラリアに1年住んでいました。
そこでの生活がとても楽しくサーフィンもしていたので、日本に帰ってからも海のそばに住みたいなあと思っていました。
そんなタイミングで、ちょうど祖父母が住んでいた室戸の家を処分するかどうするかという問題が家族内で持ち上がり、処分するなら私が住むからと、実家のある奈良から室戸に来ることにしたんです。
室戸に住むことが決まり、仕事を探しに室戸市役所の移住促進室に行きました。
オーストラリアで色んな観光アクティビティを体験したことがきっかけで、観光に携われたらという漠然とした希望で就職口を探していたのですが、そこで地域おこし協力隊制度を知りました。
企業に就職するか?協力隊になるか?正直悩みました。お盆やお正月に祖母の家を訪ねていたものの、室戸に親戚や知り合いがたくさんいるわけではなかったので、一つの企業にすぐ就職するとコミュニティが限定されてしまうなと考えました。そこで地域おこし協力隊員になって、室戸での人脈をまず広げようと思い、室戸市観光ジオパーク推進課の観光振興や体験型観光推進のミッションに応募しました。
〈地域の方々との体験型観光プログラム作りで、運命の出会い〉
着任してからはどんどん知り合いが増え、地元の方々と一緒に苔玉作りのワークショップを行なったり、大敷(定置網漁業の組合)の水揚げと漁港見学ツアーなどを企画してきました。
「しいな遊海くらぶ」の中でも定番人気の体験プログラムとなっている「ビン玉編みロープワーク体験」は、元々大敷の見学ツアーの中で漁港見学の後、朝どれ鮮魚の料理ができるまでの時間つなぎの部分だったもので、漁師さんに弟子入りして編み方を覚えて体験に仕上げました。これらの体験は、形を変えながら現在も地元の方々で継続開催しています。
協力隊であるということで、普通に暮らすだけではなかなかできない体験や、色んな人と知り合うことができました。
その最たるものが、大敷漁師の夫と出会ったことです。まさか室戸で結婚までするとは思い描いてなかったのですが、ご縁があり結婚することとなりました。当時は育休を協力隊員が取るというのは室戸市では前例がなく、育児に専念したい思いもあり迷いましたが、一年と少しで退任となりました。
〈現役隊員に伝えたいこと、協力隊制度について思うこと〉
協力隊がやりたいことと行政の職員さんがやってほしいこと、協力隊制度についての認識も、行政の職員の間でも捉え方が微妙に違うのかなと同じ時期に隊員になった同僚と自分を比べて感じることがありました。
自分から出てきたアイデアについてここまでなら業務として認められる、これ以上は業務外になる。ここまでなら予算を出せる、出せないなど、行政とその都度確認しながらやっていくのがお互いにとっていいと思います。
市町村によって状況は違うと思いますが、うまく制度を活用すればその時の経験を利用して、その後も地域で暮らしていけるかも知れませんね。
〈室戸で暮らす、思い描く未来〉
私の場合こうしたい!こうなりたい!という最終目標もなくただ室戸に暮らしたいという思いだけで地域おこし協力隊になりました。ただ、オーストラリアで観光アクティビティをたくさん経験し、ガイドの力量ひとつで体験の満足度が大きく変わることを体感し、そこに面白さは感じていました。
現役隊員の時から関わり、夫が働く椎名大敷組合もある室戸市椎名地区の団体「しいな遊海くらぶ」のイベントやWSには今もスタッフとして参加していて、ここでしか聞けない、観れない、食べられない、体験できないものを観光客に体験してもらう面白さや大切さを感じています。
ただの旅行から室戸が特別な思い出の場所に変わることで、少しでも室戸に来る人や愛着を持つ人が増えるといいなと思って参加しています。
子供もいずれは大きくなり室戸を出ていくかもしれませんが、室戸が好きと感じながら育ってほしい。
今はWEBデザインやマーケティングの勉強もしていて、いずれは室戸で集落に関わることや観光の仕事に役立てたいなと考えています。
〈〈取材を終えて〉〉
実は仕事でも現役時代から一緒に活動している仙頭さん。あらためて取材することで初めて知る過去や深い思いの部分を聞くことができました。地域おこし協力隊は途中退任となりましたが、今も協力隊時代に築いた体験プログラムや地域団体に参加し、子育てしながらスキルアップも続けて室戸で暮らしていることが素敵だと思います。仙頭さんが室戸にいることは私にとっても大きな励みで、これからも室戸でともに頑張っていきたい思いを強く抱きました。
※この記事は、2024年 2 月時点の情報を掲載しています
取材担当:川島