大道 剛さん
佐川町地域おこし協力隊OB(2019年~2022年)
〈現在の仕事・生活〉
佐川町地域プロジェクトマネージャー(図書館職員)、自営業
〈協力隊に応募した理由・応募した地域を選んだ理由を教えてください〉
協力隊に着任する前は、大学の教育系研究室に所属し、新潟や鳥取といった中山間地域をフィールドに、芸術表現活動や演劇、ものづくりに関わる教育支援を行っていました。また、学校の中でどんな学びをつくれるかを考え、先生や教育委員会に提言したり、現場でファシリテーションをしたり、ワークショップを開催していました。
大学という立場で断続的に地域に関わってきましたが、次第にひとつの地域へより深く関わりたいと考えるようになりました。ちょうど次のキャリアを模索していた頃、佐川町が発明ラボを中心としたものづくりを推進していることを知り、関心を抱きました。
佐川町で話を聞くと、教育の側面でもものづくりに取り組んでいきたいという町の考えがあることが分かり、「自分ができることが結構ありそうだ」と感じたことが、応募を決めた大きな理由です。
〈任期中の主な活動内容と印象に残っていることを教えてください〉
さかわ発明ラボは、レーザーカッターや3Dプリンターなどのデジタル工作機器を備えたファブリケーション施設です。当時は、ものづくりやデザインを専門にしている人が多く、「つくることができる人」はすでにたくさんいました。その中で、自分は「つくったものを社会にどう還元するか」という部分が得意だったので、そうしたメンバーと一緒に何かをつくっていくことが純粋におもしろかったです。
まず取り組んだのは、子どもたちを対象にした「放課後発明クラブ」です。それまでは月に1度の単発ワークショップでしたが、担当になってからは、継続性あるワークショップを毎週開発・実施していきました。それ以外にも、子どもたちと一緒に公園にベンチを設置したり、住民の方々とかかしをつくったりと、身近なものづくりに取り組んだことが印象に残っています。

このような活動を続けていく中で、少しずつ子どもたちや保護者との信頼関係ができてきました。自分たちのちょっとヘンテコなものづくりも受け入れてもらえるようになり、来てくれる子どもたちや保護者にも「ただ遊んでいるだけではない」ということがしっかり伝わっていたと感じています。
こうした地域では、ぼくらのような“外から来たよくわからない大人”の存在そのものに価値があるのだと思います。さまざまなものづくりを体験できる場所は身近に多くありませんし、保護者の方も子どものためにいろんな選択肢を求めているのだと実感しています。

〈任期中の悩みや課題、それに対して取り組んだことを教えてください〉
活動の中盤で新型コロナウイルスが流行し、イベントや対面での活動が制限される中、地域の方々とどうつながり続けるかが大きな課題となりました。そのような状況下でも、発明ラボの運営メンバーと共に、制約の中でできることを模索し、オンラインでの活動や新しい形の地域との関わり方を試みました。あの時の仲間とは、今でも強い信頼関係を築いており、その絆が今後の活動にも大きな支えとなっています。
〈任期後の仕事を選んだ理由を教えてください〉
現在は、地域プロジェクトマネージャーとして新しく開設された図書館で活動しており、地域の文化や学びの場をつくることに力を入れています。また、協力隊で出会った仲間と共に起業し、各地で地域コミュニティをつくる事業を展開したり、地域の教育を支援するためのボランティア活動や個人事業も並行して行っています。
個人事業主としての活動が始まったのは、協力隊2年目のことでした。発端は、「木育のワークショップをやってもらえませんか?」という相談が発明ラボに寄せられたことです。話を聞きながら「そもそも何のための木育なのか?」と掘り下げていくと、背景に町の計画があることが分かってきました。そこで「だったら、こういうことを学んだらどうですか」と提案していたところ、「じゃあ、やってみて」と声をかけてもらい、学校現場でICTを推進する役割として動くようになりました。
協力隊としての活動と並行して、自分の事業を少しずつ立ち上げることができたおかげで、任期後もこの町で継続的に活動を続ける道が開けました。また、在任中に地域の方々や事業者の皆さんと信頼関係を築けたことは大きな財産で、その信頼が今の活動にも自然とつながっています。

〈現役の協力隊にメッセージをお願いします〉
地域との相性は、実際に足を運んでみないと分からないところがあると思います。これから協力隊を目指す人には、まずは一度現地に行ってみることをおすすめします。
いま活動している協力隊の方には、住む場所は早めに探したほうがいいと伝えたいです。また、仕事をがんばることよりも、地域を楽しむことや、新しいことを楽しむマインドがあると良いと思います。この3年間を「長い旅行」だと思って、その地域を思いきり遊びつくすつもりで過ごせば、きっといろんな発見やつながりが生まれると思います。
〜取材を終えて〜
デザインやものづくりは、一見すると“好きなことをしているだけ”と思われがちな分野ですが、自分たちを客観的に捉え、そうした誤解をまちの人に与えないよう工夫しながら取り組んできた姿勢がとても印象的でした。ひとつひとつの取り組みに対して「何のためにやるのか」「どのように進めるのか」を丁寧に考えて活動し、その積み重ねが周囲からの信頼にもつながったのだと感じました。
そうした取り組みを「種をたくさん撒いて、芽が出たら摘みにいく」という言葉で表現されていた大道さん。遊びの中にも、まちや教育への思いをしっかりと形にしていくことの大切さを、改めて学べた取材でした。
2026年2月時点 取材担当:廣瀬真也


