OBインタビュー 藤村晃二さん(津野町地域おこし協力隊OB)

藤村 晃二さん
津野町地域おこし協力隊OB(2015~2018年)

〈現在の仕事・生活〉
グラフィックデザイナー、津野町の観光情報発信、ツノトゥク運行業務など

 いつか地方で暮らしてみたい、新たな仕事にチャレンジしたいという思いから、旅で訪れたことのあった津野町へ2015年に移住し、地域おこし協力隊に着任しました。観光振興のミッションとして町内の観光資源を発掘し、観光客向けのマップづくり、地域イベントのお手伝いやチラシのデザインを担い、2年目には高知県高幡地域で開催された「2016奥四万十博」に携わり、高知県津野町観光PRトゥクトゥク「ツノトゥク」を企画し展開しました。

〈「やりたいことができる」チャンスを活かして、ここでしかできないことをしよう〉

 協力隊の活動期間中は、着任前に勤めていたネットショップでの経験やもともと自分が好きだった旅をすること、写真撮影、デザイン等を活かして、さまざまな仕事を任せていただき、技術を磨くことができました。また、仕事を通して町を知り、町や地元の方々とコミュニケーションを重ね、人脈を築きました。

 協力隊を卒業する半年前まで次の仕事が決まっておらず、地元の大阪へ戻らないといけないかなぁと思っていました。卒業が近づいてくると、ありがたいことに就職先の紹介もありましたが、自分のしたいことを仕事にするチャンスだと捉え、就職ではない働き方を考えました。

 不安はもちろんありましたが、活動を通じて築き上げた基盤を活かし、ここでしかできないことを卒業後もやっていこうと考え、町の抱える課題に対し、これまで培ってきたデザインや情報発信を活かした提案をした結果、個人事業主として観光の情報発信の仕事に携わることにしました。

〈自分とこの土地に合った働き方をしていきたい〉

 協力隊卒業後は、グラフィックデザイナー、津野町の観光情報発信、ツノトゥク運行業務などの複数の仕事を個人事業主として担っています。今の働き方は私に合っていて、自由な時間をもちながら、自分がやりたい仕事をし、楽しくありがたいです。

 仕事を一人で担うということは、多くのことを自分で学びながら解決しないといけないので大変な時もあり、いつまで仕事があるかという不安もあります。複業なので、職人さんのように一つの仕事に集中し、突き詰めて働いている方と比べると太刀打ちできないこともあります。

 複数の仕事で生計を立てることがいいのか、向いているのかは、人によると思いますが、人口が少ない地方では、人一人ができることの多さが求められていると感じます。複数の仕事を持つことで、もし一つの仕事がなくなっても他の仕事でカバーできる。一人でいろいろな仕事をすることも地方での働き方のひとつではないかなと思います。

〈自分がしたいことから地域と同じ方向に向くことが大切〉

 地域でコトを興す中で、考え方の優先順位は、まずは「自分がやりたいこと」を一番にもってくるべきで、その次に「地域のためになるのか」を考えることが大切です。そうすることで、自分にも責任が生まれます。「地域のため」を一番にすると、自分が地域のためにやってあげている感が出てきて、地域の人も心地よくなくなる。上手くいかなければ、地域のせいにしたり、地域を嫌いになったりして、責任を地域に押し付けることにもつながる。そうならないように、自分がしたいことをまずは一番に考えて、それが地域の求めていることか、同じ方向を向いているかを確かめることが大切だと思います。

 地域と逆方向を向いているような自分がしたいことはしないほうがいいと思います。地域の方も、よそから来た若者の「こんなことをしたい」を手伝ってあげたい、そんな気持ちでいるのではないでしょうか。

〈地域おこし協力隊を検討中の方、活動中の方へメッセージ〉

 地域おこし協力隊は、地域にどっぷりつかるイメージを持たれがちですが、活動の仕方は人それぞれで、いろいろあると思います。どっぷりつからなくても、その人にできること、地域に貢献できることはある。地域おこし協力隊の活動期間中はいろいろなことに挑戦できる、実行できるいい機会です。何事もやってみないと分からないので、この環境を活かして、まずは行動に移すことが大切だと思います。

〈〈取材を終えて〉〉

 優先順位の一番は「自分がやりたいこと」で、その次に「地域のため」を考えることが大切とおっしゃっていた藤村さん。地域の活性化は「地域のために」が優先されがちですが、まずは自分の意思が大切で自分にも責任をもつこと。そして、自分の意思と同じくらい地域の考えも受け入れて大切にすること。自分も地域も認める。それが互いにいい方向を向く、地域の活性化に繋がるコツだと改めて気づかされました。

※この記事は、2024年9月時点の情報を掲載しています。

取材担当:小笠原 知美