村川 愛美さん
佐川町地域おこし協力隊OB(2018~2020年)
〈現在の仕事・生活〉
植物種苗の栽培販売、コケテラリウムづくり体験の提供、放課後等デイサービスでの仕事
〈協力隊になった経緯〉
出身は新潟県、就職をきっかけに関東や中国地方で働いてきました。ちょうど東京で生活していた時に東京オリンピックが決まり、人がこれ以上増える環境は嫌だなと思い、地方への移住を考え始めました。最初は前職で樹種の保存や天然記念物の保護など、森林を育てたり残したりするための機関で働いていた経験から、林業ミッションの協力隊募集を探していたのですが、ふと佐川町の「牧野公園管理業務」というミッションが目につきました。もともと東京にいた時も山へ登ったりするのが好きで、植物に直接触れられる仕事かもしれないと思い仕事の詳しい内容を町に問い合わせたら、「1週間後に面接があるから受けませんか?」という返答がありました。急だったので迷ったのですが、採用担当の職員さんの対応が良かったので思い切って飛び込みました。
〈業務外の時間で広がった人間関係〉
牧野公園は町役場の担当者や、住民の方が手入れなどの管理をしていました。その担当者の補助的なお仕事や、「まちまるごと植物園」という町全体を植物園に見立てた取り組みの手伝いが主な仕事でした。牧野公園内には多種多様な植物があり、そのリストの整理や名札の付け直し、SNSでの情報発信などが主な業務だったのですが、最初は知識がないので大変でした。でも山野草の勉強は好きだったので、朝一で公園に足を運んでは植物の名前を覚えたりしていました。
業務以外では、地域へよく出かけて行きました。植物に関するイベントだったり、牧野公園で行われている朝のラジオ体操にも毎日参加したり、各エリアの集落活動センターへ顔を出して地域のことを教えてもらったり、JAが企画した畑仕事の講習やクッキングイベントにも参加しました。おもしろかったのは、地域のウォーキングイベントに参加したら翌年には実行委員になっていたこと!(笑)
業務以外の時間にも色々な場所へ足を運ぶことで、そこで出会った方々から退任後のなりわいづくりのヒントを得たり、地元のキーマン的な方たちとつながり、人間関係が広がっていきました。ちなみに今住んでいる家も、そんなつながりから借りることができたものです。
〈ふんわり起業と今の暮らし〉
あっという間に3年間が過ぎて、退任後はまちの文化施設「桜座」に1年半ほど勤めました。同時に、苔テラリウムづくり体験を提供したり、山野草の種苗を作って販売することを個人事業主としてはじめました。このなりわいは、朝のラジオ体操で出会った観光業に関わる地元の方から「苔で何かやってみたら?」と言われたのがきっかけで、「じゃあやってみます」と「ふんわり起業」として始めました。


その後、NHKの朝の連続テレビ小説「らんまん」の放送が決まったのを機会に、このタイミングを活かしてみようと桜座を退職、苔テラリウムや山野草の種苗作りにシフトしていきました。今は情報サイト「じゃらん」などを利用し、苔テラリウムづくりを体験する場を提供したり、道の駅で自ら栽培した山野草の種苗を販売したり、ふるさと納税の返礼品としても提供しています。

それに加えて、町内の放課後等デイサービス「じんじん」という施設で障害のあるこども達を支える仕事もしています。また、桜座は辞めてしまったんですが、桜座を支えるボランティアグループ「桜座クラブ」には在籍して、会計係やイベントのお手伝いなど関わりは持ち続けています。
これまでもそうでしたが、おもしろくありたい、やりたいと思ったことをやれる状況で居続けたいです。ちなみに、今は放課後等デイサービスの仕事に役立てられそうな保育士試験を受けるために勉強中です。
〈地域おこし協力隊を検討中の方、活動中の方へのメッセージ〉
地域での活動においては、「こうであるべき」という考えを持ちすぎるとしんどくなるので、「まぁいいや」くらいの方がうまくいくかもしれません。自分を曲げてまで地域のコミュニティに入る必要はないけれど、相性や縁もあるので「やってみる」、「飛び込んでみる」という姿勢も大切だと思います。
〈〈取材を終えて〉〉
市町村にもよりますが、協力隊の仕事は週4日なので、それ以外の3日間の過ごし方も退任後の暮らしづくりのために大切な時間です。村川さんはその3日間の過ごし方が結構アクティブで、今の暮らしやなりわい、人間関係につながっていると実感させてくれる方でした。移住したばかりの頃は慣れないことも多く疲れるかもしれませんが、おもしろがってあちこち出かけてみてほしいです。そしてその時に感じた感覚を大切にしてほしいと思います。
※この記事は2024年9月時点の情報を掲載しています。
取材担当:大原 梓