OBインタビュー 斉藤祥太郎さん(宿毛市地域おこし協力隊OB)

斉藤 祥太郎さん
宿毛市地域おこし協力隊OB(2019~2022)

〈現在の仕事〉
宿毛市役所職員(産業振興課) 

〈競争にさらされない環境を求めて〉

 子どもの頃から東京で暮らし、学生時代は競争にさらされる環境で過ごしました。大学生の頃から、そんな環境が窮屈になり、都会から離れたいと感じるようになりました。

 ちょうどその頃、バックパッカーで東南アジアを旅したり、国内をヒッチハイクで周ったことで、自分が今まで気づかなかった田舎ののどかな生活を知り、自分もこんな生活をしてみたいと思うようになりました。

 はじめは島暮らしをしたいと考えて情報収集をしていましたが、協力隊制度を知り、「移住後にうまくいかなくても3年間は生活できる」と考え、JOINのサイトからすべての募集に目を通しました。

 どこかのサイトで、高知県は移住者が多いという情報を見つけ、それなら移住者も暮らしやすい風土があると考え、高知に絞って情報を集めました。

 港町が良いと考えていたなかで、唯一募集のあったのが宿毛市でした。当時は自伐型林業の募集で、漠然と一次産業で働きたいというイメージもあったことから、応募することにしました。

〈挫折を経験、そしてミッションを方向転換〉

 ミッションは「自伐型林業の実践と普及」でした。まずは林業の技術を身につけるため、山に入ってさまざまな作業を覚えました。新しいことを覚えることもあり作業も楽しく、林業の現場では「自分の判断が自分を守る」ということを学びました。

 着任当初は林業で起業しようと考えていましたが、1年ほど経験して、起業はそんなに甘くないということに気付きました。起業し事業を継続していくには、施業地の確保や更なる林業技術の向上などが必要です。周りの人は自分に対して林業で起業することを求めているのに、自分にはそれが難しいのが見えてきて、かなり悩む時期がありました。

 いろいろと考えた末、2年目の途中で林業の「普及」に活動をシフトすることを職員さんに相談し、森林整備や環境教育に関わる業務を担当することになりました。

〈まずは生活の安定を〉

 プライベートでは、地域の状態や文脈を知りたいと思い、協力隊1年目にたくさんのアルバイトをしました。宿毛市内のカフェや、定期船の切符売り、農業の手伝いなどをして、人脈も広げられました。

 しかし2年目になると、林業ミッションのことで頭がいっぱいになり、アルバイトは全てやめました。今思えば、その頃は精神的にも不安定で、夜中に眠れずに家の周りを歩いたりすることもありました。

 悩み考えるなかで、「まずは自分自身の生活を安定させることが大事だな」と気付き、パートナー探しを積極的に行い、妻と出会うことができました。協力隊3年目には結婚し、生活が安定するようになりました。

 自分の生活が安定し、次に考えだしたのは、就職して安定した仕事に就くことでした。協力隊で経験した行政でのキャリアが活かせると思い、宿毛市の公務員になると決めて職員さんに伝えると、「宿毛市に残ってくれるのが一番」と言ってくれました。そのおかげで、迷いなくその方向に進むことができました。

〈協力隊が自分自身のことを振り返る時間をつくる〉

 今は職員になって2年目です。林業や鳥獣害対策に加え、林業ミッションの協力隊サポートも担当しています。職員になって気付かされたのは、業務のボリュームが多く、協力隊のサポートに割ける時間を十分に確保できないということです。

 協力隊のサポートで必要だと考えることは、協力隊が自分自身のことを振り返る時間をつくることです。「やりたいことは何なのか?」「何をしていると楽しいか?」「自分にできることは何なのか?」など、協力隊自身の内側から動機が生まれてくるようなサポートを目指しています。

〈これから協力隊を目指す方、現役の協力隊の方へ〉

 協力隊になると、いろんな方からさまざまな期待を寄せられると思いますが、まずは自分を満たすことからはじめても良いのではないでしょうか。本当に自分がやりたいと思っていることが、地域おこし協力隊になることで叶えられるのかを考えてみたらいいと思います。

 そして個人事業主になるなら、甘えは捨てる必要があると思います。私は起業の難しさを痛感しました。だからこそ、起業を考えている方は「○○だから仕方ない」とか、「○○がやってくれない」といったできない理由は言わず、全部自分でやるつもりで臨む必要があると思います。

〈〈取材を終えて〉〉

順風満帆とはいかない3年間を過ごした斉藤さん。インタビューの最中、何度か「挫折した」という言葉を口にすることがありました。それでも自分自身と向きあい続け、新たな道筋を見つけて行動を繰り返してきた3年間だと感じました。いろんな悩みや不安、壁にぶち当たる協力隊。斉藤さんの言うように、時には立ち止まって自分自身のことを振り返る時間をつくることは、大切だと感じます。

※この記事は、2024年3月時点の情報を掲載しています

取材担当:廣瀬