OBインタビュー 小野雄介さん(四万十町地域おこし協力隊OB)

小野雄介さん
四万十町地域おこし協力隊OB (2015~2018)

〈現在の仕事・生活〉
四万十町ゲストハウス「EKIMAE HOUSE SAMARU」のオーナー
地域おこし協力隊卒業後も四万十町大正の地域づくりに携わっている。

〈田舎で根付くために移住活動をスタート〉

 移住前は福岡県に住み、サラリーマンとして12年間会社勤めをしていました。大分県の田舎出身で、将来的には田舎で住みたいと思っており、最初は60歳を過ぎたら田舎で暮らす予定でしたが、自分が動けるうちに住みたい地域で暮らした方が、そこで暮らす地域の方と付き合いがしやすいと感じ、本格的に移住に向けての活動を始めました。

 普通のサラリーマンだった私が、いきなり田舎に行って仕事も何もない状態で生活をするのはキツイなと思っていたときに見つけたのが地域おこし協力隊制度です。この制度を使い、3年間田舎で住みながら就職活動をしようと考えました。

〈2つの条件に当てはまった四万十町〉

 過疎先進県である高知県では移住の取り組みが活発で、暮らしの実現に向けてサポートしてくださる移住コンシェルジュがいたので、移住相談に行きました。すると、大阪で開催される移住相談会への参加を勧められ、そこで四万十町の協力隊担当者と出会い、お話を伺うことができました。

 四万十町の協力隊は、私が市町村を選ぶ条件にしていた「先輩協力隊が活動している」「活動内容が決まっている」に当てはまっていたことに加え、当時募集していた「下津井温泉の活性化と運営」というミッションがおもしろそうと感じたことが応募のきっかけです。

〈人と会い、地域に寄り添った 3年間〉

 採用試験後にミッションの見直しがあり、下津井温泉の活性化のミッション担当ではありませんでしたが、四万十町の協力隊に合格し、四万十町での生活をスタートしました。

 着任後の2カ月間はフリーミッションの状態で、下津井地区担当の先輩協力隊に付いて集落を周ること、そして後に観光案内所や休憩所、情報発信等の拠点となる「大正駅前にぎわい拠点」の企画から場所づくり、運営までを大正地区担当の協力隊4名で取り組みました。  

 その後、海洋堂ホビー館や海洋堂かっぱ館がある打井川地区の活性化のミッションを担当しました。打井川地区の集会に出席した際、地域の方に向けて「私は地域おこし協力隊として四万十町にきましたが、地域おこしはしたことがありません。何をしたらいいか分らないので、何をしてほしいか言ってください」とお願いをしました。

 そのときに地域の方からいただいた声が「打井川地区の新聞を発行してほしい」でした。この声をきっかけに、「うついがわの新聞」づくりを始め、新聞のネタを探すために地域へ入りました。

 取材を通じてたくさんの方と知り合いになり、地域の方からの「新聞らしく作成すること」の声に応えながら毎月行しました。そのような活動を続けたことで、地域のことをよく知ることができ、地域の方にだんだんと活動を認めていただけるようになりました。

 その他にも3年間の活動で、さまざまな行事や祭りの運営や地域との調整役を担い、イベントの企画段階から地域の方と一緒に取り組む等、ミッションや卒業後の起業や就業の進路に囚われず、『人と会うこと、関わること』を地道に続けたことで、自然と知り合いが増え、繋がりがつくれたことが良かったです。

〈四万十町で暮らすために 自分ができることを〉

 大正駅前にぎわい拠点にスタッフとして常駐した際、日曜日に来る人が少ない、四万十町へ観光に来たが、お隣の四万十市で宿泊する方が多い等、せっかく四万十町に訪れる人がいるのに、機会損失になっていることに気付きました。

 そして、常駐する大正駅前にぎわい拠点の2階が元宿であったこともあり、「四万十町で自分ができることの一つであり、協力隊卒業後も四万十町に暮らしていくためにゲストハウスという方法があるかもしれない」と考えるようになりました。

 そこで、協力隊2年目は高知県内でゲストハウスをオープンした協力隊の宿で宿泊したり、県外のゲストハウス開業合宿に参加したりと、ゲストハウスの勉強に励みました。その後、許認可申請や旧宿の改修等を行い、協力隊卒業後の2018年7月に四万十町ゲストハウス「EKIMAE HOUSE SAMARU」をオープンしました。

 ゲストハウスの名前である「SAMARU(サマル)」は、アラビア語で「日が暮れたあと、遅くまで夜更かしして友達と楽しく過ごす」という意味です。「SAMARU」という場所を通じ、四万十町に観光に来られた方が四万十町で出会う人たちと友達になって楽しんでほしいと願いを込めています。

〈人と会い、地域の中と外を繋いで、楽しく地域づくりをしていきたい〉

 ゲストハウスという業種を選んだことで、自由な人になれました。協力隊のときよりも、いろいろな人と関われ、今もなお、地域のにぎやかしに携わっていること、宿に泊まりにきた外の人と地域の人を結びつけられていることが嬉しいです。

 普段はシャッターが多く閉まり、寂しい大正の町なかで一日だけでも商店街をつくろうと「大正のきさきマルシェ」の開催や、神社でジャズを楽しめる「神JAZZ」、お正月に大正駅前でそばを提供する「ふるまいそば」、大正地区にある四万十高校との関わり、大正地区で実施している地域振興事業のアドバイザー等、協力隊の3年間よりも、協力隊をしている感じが強いです。

 これからもゲストハウスを続けながら地域との関わりがある暮らしを続けていけたらと思います。私が担っている地域のイベントは、主に現役の協力隊と開催していますが、最終的には私や協力隊だけでなく、これから地域をつくっていかないといけない30代、40代の地元の人達と担っていきたいです。イベントはそんなに大変なことではないことを分かってもらい、気楽に世間話をする感覚で活動に参加してもらえたらいいなと思います。

〈地域おこし協力隊を検討中の方、活動中の方へメッセージ〉

 移り住む前に、下調べをしっかりしてください。その市町村で何人の地域おこし協力隊の卒業生が根付いているか、自分なりのこだわりを満たしてくれるところを探してみる等、事前準備でできることはあると思います。

 移住してからは、いろいろなコト・ヒトに関わりながら、地域を知ることから始めて、人脈を広げていけば、蓄積された繋がりが将来的に生かされるはずです。大きな理想を持ちすぎず、無理しすぎず、気楽に協力隊として活動すればいいと思います。

〈〈取材を終えて〉〉

 お話を伺う中で、移り住む前から、そして四万十町で生活をスタートされた後も、人と会うことを大切に、楽しみながら、しっかりと移住活動に取り組まれたことが分かりました。今もなお、地域の方に向き合い、寄り添いながら自分ができる活動を続けられています。地域づくりを楽しみ、時に周りの人を頼り、頼られながら、ガンバっている。そんな姿から、小野さんは四万十町大正のことを想い活動する「地域おこし」活動隊の一員であると感じました。

※この記事は、2024年2月時点の情報を掲載しています。

取材担当:小笠原