NEW!松本 凌平さん 高知県四万十市地域おこし協力隊(出身:神奈川県 着任期間:2023年10月~)<br/>ミッション:休廃校舎の利活用推進事業

協力隊に応募した理由・応募した地域を選んだ理由を教えてください

 移住前は好きなサーフィンができる神奈川県の湘南エリアで、家も仕事もある中家族で穏やかな日常を暮らしていました。しかし、コロナ禍以降都会から海を求めてやってくる人が増えはじめ、サーフィンをしていても人の多さや雑音に疲れると感じるようになりました。大きな不満があったわけではありませんが、子どもが生まれたこともきっかけとなり「家族が居心地の良いところで好きなことをしよう」と考え、県内外で移住先を探しはじめました。

 たまたま四万十川を一目見ようとひとりで訪れた四万十市で、自然の豊かさに圧倒され、人の優しさや食のパワーに惹かれたことをきっかけに、「移住したい」「ここで暮らしたい」という気持ちが強くなり、移住支援の情報を調べる中で協力隊を知り、移住の手段の一つとして地域おこし協力隊に応募しました。

ミッションの具体的な取り組みについて教えてください

 主な取り組みとしては、旧校舎を含む約30か所の休廃校について、どのように利活用できるかを考え、提案していくことです。大規模な建て替えではなく、既存の建物を活かしながら、地域とどう結びつけるかを重視しながら活動をしています。行政と地域をつなぐ“調整役”として動きながら、認知度向上のための<仕掛け>として、学校に残された 「教材備品」を販売するイベント、地元団体による校舎を活用した地域イベント支援、図書室に残っている本を無償譲渡する取り組みなどを行いました。

 また、地域への<協力>活動として、地域の夏祭りで、いつもは地域の方が持ち回りで行っているドリンクコーナーを協力隊のみんなで請け負い、地域の方と交流も深める場として「スナック協力隊」を出店、地元で長く続く秋祭りで子どもたちに喜んでもらうための小さな駄菓子屋さんを出店し、また、お祭りの風景を残すための撮影ボランティアなども行いました。 そして、災害復興の支援や横展開として、市や県を越えた地域おこし協力隊の合同ミーティングなどを行い、他地域の地域おこし協力隊と自分たちを<繋ぐ>取り組みも開催しました。

これまでの活動で印象に残っていることを教えてください

特に印象に残っているのは、旧校舎の整理から始まった図書譲渡会や教材備品のイベント販売会です。本の譲渡会ではこれまでに1634冊の本が地域の方の元へ渡りました。地域の方が孫のために絵本を選んだり、大人が文庫本を手に取ったりと、世代を越えた交流が生まれ、図鑑や話題作、やなせたかしさんの作品などを通じて高知県のことを知ったり、昔話を聞く機会にもなり地域の方との交流にもなりました。その流れから次のイベント開催にもつながりました。

無理に処分をしないことで、ゴミではなく資源としてまた活用され、運ぶ作業などもしなくてよくなり、なによりも結果、地域の方にも喜んでいただき、みんなが嬉しいと感じる取り組みとなりました。 また、廃校を活用した地域イベントの開催支援にも取り組みましたが、その後、地域の方々が自律的に継続開催してくれるようになったことも嬉しく、印象に残っています。

活動中に直面した課題と、その課題に対して取り組んだことを教えてください

 大きな課題を強く感じる場面は少ないものの、旧校舎の利活用というミッションは、抽象的で成果が見えにくい点には難しさを感じています。行政主導の取り組みはスピード感に欠けることもあり、タイミング次第で進まないこともあります。しかしミッションを無理に押し進めるのではなく、移住の生活を「楽しむために来た」という原点を忘れず、コミュニティ作りも楽しみながら、SNS発信などにも過剰に縛られないよう意識しながら、自分のペースで優先順位を見極めて活動しています。

地域との関わりの中で学んだこと

 過疎地域では母数が少なく、十分なニーズ調査すら難しい現実があることを学びました。一方で「人が増えたらうれしい」「福祉施設がほしい」といった声も多く聞かれます。建物の売却か貸し出しかといったしがらみの中で、何ができるかを一緒に考え、声を拾い、つなぐことが自分の役割だと感じています。歓迎ムードを押し付けられることもなく、叱られることもなく、自然体で受け入れてくれる地域の人は、本当に良い人ばかりです。

 信頼関係はイベントの数ではなく「日々の積み重ね」で生まれるということです。頻繁に顔を出し、短い会話でも重ねることで、「よそ者」から「顔なじみ」へと変わっていく感覚を得ました。また、外から来た立場だからこそ見える地域の魅力があり、それを言葉や発信を通じて伝える役割の大切さも学びました。

 協力隊の最大の魅力は「人とつながれること」であり、任期の間にたくさんのつながりを作りながら、自分も楽しく、定住のためになる良い経験が増えていくと感じています。地域と一緒に自分も楽しむ、それも目的のひとつで良いんだと思いながら、地域の皆さんと関わっています。

●任期後の意向について教えてください

 任期終了後、私はハンバーガーのキッチンカーで高知県内外を巡る開業を目指しています。現在は、休日に知人のカフェのキッチンなどを借り、イベント出店という形で店舗運営に取り組んでいます。

 地域おこし協力隊としての活動や、休日の出店を通じて地域の方々と出会い、仕入れ先の紹介や旬の食材に関する知識など、多くの貴重な刺激をいただいています。特に、地元の方々から教わる野菜や山菜の旬、そしてご縁ができた農家さんから直接届く新鮮な素材が、新しいレシピを生み出す原動力となっています。

 店名は、地域の方々と「食」を通じて関わり、一つのハンバーガーを共に作り上げるチームのような存在でありたいという願いを込めて、<Matsumoto Burger Club>と名付けました。地元の生産者から直接仕入れた「旬」を最大限に活かし、季節限定メニューを主軸とする、全国的にも珍しいスタイルを構想しています。「今、この時」しか味わえない高知県の食の魅力をトレーラーいっぱいに詰め込み、全国各地へ「地元の旬」を届けるハンバーガーショップを目指していきたいと思います。

2025年12月時点  取材担当:竹村優香