NEW!猪俣 美和さん 高知県津野町地域おこし協力隊(出身:新潟県 着任期間:2024年3月~)<br/>ミッション:まちづくり推進

協力隊に応募した理由・応募した地域を選んだ理由を教えてください

 大学で栄養学の勉強をし、子供向けの食育の仕事に興味があったこともあり地元のJAに就職しました。農家さんから手作りのジュースやお餅をいただいたり、野菜を作っている姿を見て、「自分で作るってすごいな」という思いが積み重なり、教えるだけじゃなく自分自身で農業をやってみたいと思い退職しました。

 その後、日本各地の農家さんの手伝いをしながら現場を見て回ったり、地元に帰り飲食の仕事にも携わりました。そうして日々過ごしているうちになぜか、行ったことも知り合いもいない高知県が気になるようになりました。

 旅行に行ってみようと思い立ち調べていたところ、地域おこし協力隊の存在を知りました。さっそくオンラインセミナーに参加して気になるミッションをピックアップし、その中のひとつである津野町にメールを送りました。役場担当者さんの案内のもと初めて町を訪れた時、町の人の温かさに触れ、話をしている内に、ここに住んでいるイメージが湧き地域おこし協力隊として移住することを決めました。

ミッションの具体的な取り組み内容を教えてください

 各地域の集落活動センターで組織されたネットワークのサポート役としてイベントのお手伝いをしたり、住民の方と一緒に作物を育てたり、イルミネーションイベントでは竹を素材にドームを作ったりもしました。また、町を知るために色々な場所を巡る中で、おまんじゅうや寿司などの手仕事をしている人々と出会い、「自分の心がときめく人たちがたくさんいるんだ」と感動しました。

 それと同時に、町内の人は自分の集落のことはよく知っているけれど、隣の集落のことは意外と知らないという現状を耳にして、自分の心が動いたものを知ってほしいという気持ちが湧き、「てのひら」という手仕事をテーマにしたフリーペーパーを発行することになりました。

 取材も編集も未経験だったので、最初は自分のスキルでできる範囲のものをと考えていましたが、伴走支援をしてもらっていた高知県地域おこし協力隊ネットワーク「とさのね」の廣瀬さんから、「ちゃんとしたものを作った方がいいよ」というアドバイスを受け、せっかく協力隊としてここまで来ているんだから自分の想像の上をいくものを作ってみようと思い、周りの人の協力を得ながら発案から1年越しで創刊号を形にすることができました。

活動中に直面した課題と、その課題に対して取り組んだことを教えてください

 ミッションが『まちづくり推進』という抽象的で幅の広い仕事だったので、最初は何をしていいのか分かりませんでした。何もできていない申し訳なさと無駄な時間を過ごしているのではないかという焦りや漠然とした不安が募っていました。でもフリーペーパーを作ろうと決めたことで、地域の人と話している時間がフリーペーパーを作ることにもつながっていると思えるようになり、そんな気持ちは無くなりました。

元々ものづくりが好きで自分で籠を編んだりもしていましたが、それらはすべて自己完結のものづくりでした。今回のフリーペーパー作成は、色んな方に協力してもらい、人とのつながりを通してできたもので、完成したものへの反応も返ってきます。取材した方から「スクラップして保存してるよ」という声をいただいた時には嬉しかったですし、自分のやりたいことが誰かのためになると実感できたことは今後の希望になりました。

地域とのかかわりの中で学んだことを教えてください

 いっぱいあります。料理をはじめ縄ないや編み物などの色々な手仕事を習いました。地域の方は「私がやっちゃる!(やってあげる)」と世話好きな方が多く、やってもらったらその分自分もできる限り返したいと思えるようになりました。

 また、私の周りのおばあちゃん達は本音を言い合い、言い終わったらお互いスッキリして帰る。そういう関係性がいいなと思います。今まで私は言いたいことが言えない性格だったのですが、周りのおばあちゃん達と関わるなかで、今では言いたいことが言えるようになり、断ることもできるようになりました。そういう部分は高知に来て鍛えられたなと思います(笑)

●任期後の意向について教えてください

 まずは任期中にフリーペーパー「てのひら」を4号まで作りたいと思います。任期後のことはまだはっきりと考えられていないですが、ものづくりは続けたいですし、それで生活できたらいいなとも思います。今は『今ここで感じること』を大事にして、自分の中にある正直な気持ちをもう少し聞く時間にしたいです。

2025年12月時点  取材担当:大原 梓