●協力隊に応募した理由・応募した地域を選んだ理由を教えてください
以前は東京で建築業の会社を経営していましたが、どこかに移住したいという気持ちを持っていました。そんな中、コロナやウッドショックの影響で資材が高騰したのをきっかけに木材に興味が湧き、色々調べていたところ、たまたま本山町がコンパクトフォレスト構想を掲げて地域フォレスターを募集しているのを知り、「これおもしろいんじゃないか」と勘が働き、説明会に行きました。
本山町には何度か足を運び、関係者の方や、協力隊OBで現在は「一般社団法人もりとみず基金」でフォレスター(森林総合管理士)として活動されている方との出会いもあり、話を聞いているうちに協力隊という働き方を知り移住する流れになりました。
●ミッションの具体的な取り組み内容を教えてください
地域フォレスターとは、木を切ったり道を作ったりする林業の仕事とは違い、森林を管理する仕事です。全国にはフォレスターとして国家資格を持ち、林業に携わる方々がいます。多くは行政で働いていますが、民間でもフォレスターを育成しようという流れが全国的にあり、その流れを受けて、本山町では協力隊として地域フォレスターを育成しようという話が持ち上がり、私がその一期生となりました。
1年目は高知県の林業大学校に通い林業のこと、木材の流通のことなどを勉強しました。2年目以降は実際に現場に行って木を切ったりする作業を本格的にやらせてもったり、町の林業従事者の情報把握を進めています。任期はあと半年ほどですが、今後どうやって収入を得るのかも模索しています。


●活動中に直面した課題と、その課題に対して取り組んだことを教えてください
建築関係の現場では安全管理が徹底されていたのに対し、林業の現場は急峻な現場で危険な作業が多く、死亡災害が多いにも関わらず、安全管理が不十分なケースがあることが課題でした。
まずは町の林業に携わっている方々の安全意識を高め、命を守ることを考えてほしいと思い、2年目に「林業の安全を考える会」という名目で、嶺北地域の山づくりに取り組んでいる会社の代表に安全管理について話してもらう機会をつくりました。
3年目には、一般財団法人もりとみず基金、本山町、山主さん、嶺北消防署、高知県消防防災航空センター等の方々と協力し、林業労働災害レスキュー訓練を行いました。嶺北地域の林業従事者や林業に関わる地域おこし協力隊など28名が参加し、労働災害に遭遇した時の対処方法や、実際に山で防災ヘリを使った救助訓練も行いました。
この訓練は仲間の命を守るための安全に対する意識の向上や、民間と行政・消防が連携して林業に関わることを考えるきっかけづくりになったと思っていて、地域フォレスター及び協力隊として意義のある活動になったと実感しています。
これを機会に「嶺北地域の実際の林業施業現場でも訓練をしないか」という声が消防署から上がっており、今後、実際の現場で定期的にレスキュー訓練を行っていきたいと考えています。全国的にもこのような事例は数少ないので、嶺北地域から広がってほしいと思います。


●地域との関わりの中で学んだことを教えてください
都会暮らしよりも地域活動に関わることが増えました。プライベートでは消防団に入団していますが、高齢化と人手不足が深刻で活動が難しくなっているのを知りました。
また、都会で暮らしている時は隣の住人のことを知らなかったのに対して、今の暮らしは人間関係が近いと感じます。僕は山の中腹に住んでいますが、麓から栗を持って来てくれたおばあちゃんがいて驚きました。何でそんなに良くしてくれるのだろうと最初は不思議でしたけど、毎朝あいさつをしたり、共同の道の草刈りを手伝ったり、そういう関わりがあるからかなと思います。
ときには田舎ならではのつながりを窮屈に感じることもあります。いつどこで何をしていたか知られていて、プライバシーがないなと感じたり、自分の言ったことがすぐに広まったりして驚きました。人間関係の近さは田舎にとって良い面も悪い面もありますが、今はそれが普通だと感じ始めています。それも含めて田舎の人間関係なのだと。

●任期後の意向について教えてください
まずは本山町の地域フォレスターとして町の方々から信用を得たいと思っています。そして、林業関係者のハブ的役割を担いながら、林業環境をもっと良くすることや、林業従事者の命を守ること、もっと林業で稼げるように尽力したいと思っています。どうやって収入を得るかは模索中ですが、それに関わる事業は動き出しています。
「2025年10月時点」取材担当:大原 梓


